
「もし明日が来ないとしたら、自分は何を選ぶのか? その問いに正直に生きていきたい」
前編では、バリキャリだったサラリーマン時代と、突如訪れた大病による価値観の変化についてお話を伺った。子宮頸がんの治療のため、自費治療のオプジーボを選択した北林さん。後編では、自分で選ぶことの怖さと大切さ、奇跡的な回復と現在の活動について語っていただいた。
本当に自分で選ぶということはこんなにも怖いこと
大学病院で勧められた抗がん剤による治療と、未認可自費治療のオプジーボによる治療。選ぶにあたって様々な葛藤があったが、決断のポイントは意外なところにあった。
「オプジーボを選ぶにあたって、製薬会社の友人に頼んで海外のエビデンスを取り寄せてもらったりとかしたんですが、調べたり考えたりするほどに不安が募っていく一方で。
ある時考えるのに疲れて、もうやめよう、と思った時に、『どちらも効かなくて、もしあと三週間の命だったらどちらを選んだ方が後悔が少ないか』という問いが出てきました。それなら、できるだけ副作用が少ないオプジーボで穏やかに死んでいきたい、と思ってオプジーボでの治療を選択しました」
より後悔の少ない選択をした北林さん。選んだときは震えるほど怖かったという。
「その時の選択が本当にもうめちゃくちゃ怖くて、例えるなら高校を第一志望で受かってるのに中卒で生きていきます、と周りに宣言するような、世の中全体に反対されそうな、そんな恐怖でした。
実は怖すぎて、親には余命のことすら話せていなかったんです。夫が代わりに話してくれて、そしたら父が応援する、と言ってくれて。それまで感じたことのない自己肯定感で満たされました。そこで初めて、ああ、自分で選ぶっていうことはこんなにも怖いことなんだ、と気づいたんです。今まで自分で選んできたつもりだったことは、全部外部の環境や評価に流されて決めてきたんだなって」
実際に治療を受け、治療後にがん患者さんが入るリトリートに一週間入院した際、6人いた先輩患者のうち5人にはオプジーボが効いていなかった、ということを知った。思いのほかショックは少なかったという。
「もし、どちらがよく効くだろう、と思って選んでいたら、たぶんショックとストレスで死にかけていたと思います。でも、効かない前提で選んでいたから、がっかりはしたんですけれど、気持ちを切り替えることができました。効かないことは分かったんだから、自分の体が毎日頑張っているのを信じて、その邪魔をしないで生きよう、と前を向けました。自分で選ぶから思った通りの結果が出なくても、ちゃんと力強く前に進めるんだな、と強く実感しました。この経験が本当に大きいです。そしたら奇跡的に薬が効いて、2か月で治ってしまいました」