◆和田麻弥さん◆「ありがとう」が続く国モロッコで「生まれちゃった」砂漠の海賊(前編)

「日本は〝他人に迷惑をかけない〟と言いますが、それがモロッコでは〝皆で助け合う〟ということ」

和田麻弥(わだ・まや)さん
モロッコに住んで16年。現地で旅行会社(http://www.ksour-voyages.com/jp/)を切り盛りする、和田麻弥(わだ・まや)さん。モロッコと日本は片道24時間近くかかるものの、年に2度は行き来している。けっこうな移動距離だが、そのたびに「モロッコで気づいたことを言語化するためには日本に来て話さないと!」と思うのだそうだ。今回は運良く日本に来るタイミングでお会いできた。まもなくオープンするという、こだわりのホテルの話にも迫る。

「ありがとう」がずっと続いていく国

アフリカ北西部の国、モロッコ。サハラ砂漠の星空やシャウエンの青い世界ーーなどと観光地を思い浮かべてしまうが、なんと和田さんがモロッコに赴いたのは「単なる偶然」だと言う。

 
「美大生だったので、アルジェリアの古代洞窟壁画〝白い巨人(セファールの神)〟が見たかった。1万年ほど前の〝最初の人類が描こうとした欲って何だろう? 描きたいってどういうことだろう?〟と思って、それを確かめたかったんです。ところが、当時内戦でアルジェリアには入れず、しょうがないから、かわりに隣のモロッコに行きました。だから、偶然なんです」
 

なぜ、偶然から16年もモロッコに「住む」ことになったのか?

 

「旅行中に泥棒に遭遇したんです。盗られないように走ると彼も走るし、わたしが止まると彼も止まるので、わかりやすい泥棒だなと思っていたんです。バカだなぁとさえ思いました。次にアタックしてくるだろうなと予想していたので、案の定、彼は盗れなかった。そうなると、ふつう泥棒って逃げるじゃないですか? でも彼は逃げずによろめいた後に笑ったんです。それが衝撃で!
超ネガティブのかたまりだったわたしは、〝なんだ、この国の神さまは泥棒にも笑顔を許してくれるほど心の広い神さまなんだ〟と。泥棒に比べたらわたしなんか別にひどいこともしていないし〝いいじゃん、全然笑って生きて〟と思えました」

 

チャキチャキとした口調で、迷いもためらいもなく言葉が流れ出す。そんな和田さんが「超ネガティブだった」のは、とても引っかかる。さらに「生きていていい」とは?

 

「小学校の時に、自分の意識としてはいじめられていたんですね。でも、当時鬱で苦しんでいた母に相談はできませんでした。さらに幼稚園からカトリック教育という環境の中、〝神さまと結婚する〟と誓ってその道を歩むはずの一部シスター方の子供心への思いやりのなさに、宗教は人を救えないと感じて育ち、大人にとても不信感を持っていました。
環境問題への無策を含め、人を生かすことよりも、いかに減らすか考えた方が良いと真剣に思っていたんです。そこまで生きることにこだわる価値など何もないと信じていました」

 

そして、たまたま行き着いたモロッコで見たのが「泥棒のくったくのない笑顔」だったというわけだ。
 
砂以外に何もないとされる極地に、人は何を見出し、そこにどんな幸せがあり、生き続けるのかーーと思っていたところにその泥棒に出会ってしまった。その瞬間に、死なないことを選ぶことで、生きるという選択を自らすることになった大人として〝生まれちゃった〟。だから生まれた所に住んでいるだけなんです。
わたしも普通にやっていたらきっと誰かが〝ありがとう〟って思ってくれるかもしれない。そう思ったら、本当にすべてが許された……というか〝生きていていいし、働いていいし、そのまま笑っていてもいい〟と言われた気がしたんです」
 

しかし、人生を変えるような出来事を持ってきてくれたその泥棒に〝ありがとう〟と言えない。
 

「そうですね。だから〝ありがとう〟を言う手段としてモロッコで働くことを選んだという感じです。なので日々、〝皆さんどうもありがとうございました〟と不特定多数のモロッコの人に言うつもりで仕事をしています。
感謝の気持ちって、なかなか変わることじゃないと思う。幸いわたしがモロッコに持っている気持ちは〝ありがとう〟。日々びっくりするような発見がある国なので〝ありがとう〟がずっと続いていく。それ以上、ここに暮らすのになんの理由もない

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