1か月の研修で、生放送のキャスターへ

 

「たまたまその年は、NHKがアナウンススクールでアナウンスかぶれしていない、まっさらな素人を採りたいという方針だったことも幸いして、もう引き寄せられるようにキャスターになっていたんです。まさか、キャスターが自分の仕事になるとは思っていませんでした」

 

3月に全国の新人キャスターが集まる3日間の東京研修があり、1か月の研修ののちに、生放送のキャスターとしてキャリアをスタートさせた。

 

「当時は講師に池上彰さんなど、錚々たるメンバーがいらっしゃいましたが、そこでも一人だけ本当に落ちこぼれで。しゃべれないし、読めないし、フリートークできないし、メイクだって知らないし、自分でも〝大丈夫なのかな?〟と思いながらも、すでに4月からの番組が決まっていたので、もうやるしかありませんでした」

五感を使って生きている感じ

 

混同されがちだが、アナウンサーとキャスターは役割がちがう。アナウンサーは、記者やディレクターが作ったものを伝える。一方でキャスターは、自分のことばで意見や考えを伝えることができる。さらに、重信さんはディレクターも兼務していたので、企画から出演交渉、台本制作まで任されていた。

 

「NHKの生放送に出てもらうなんてハードルが高いので、出演交渉は断られることもあります。そこで信頼関係を築く会話の運び方とか、生放送でいかにその人の想いを引き出すかとか、それこそ、日々勉強でした。
また、生放送なので、その日のシフトに入っている担当ディレクターやカメラマンやスタッフと、番組の1時間前に初めて打ち合わせをして台本を渡します。山ほど怒られましたが、誰かの想いを引き出して、それを自分の言葉で伝えられる仕事はなかなかないなと思っていましたし、〝うまく届けられたな〟と感じた瞬間は、やはり癖になるというか、もうたまらなくおもしろくて」

 

教育とは関係なかったが、結果的に作り出すことの喜びや、追い詰められながらも「生放送」という一発勝負に、ヤミつきになる感覚があったという。

 

「すごく自分の五感を使って生きているなという感じがしたんです。アナウンサーを目指していたらこの世界観にはたどり着けなかったと思うので、本当におもしろいですよね。
こういう〝流れ〟をキャッチする力がすごく大事だなって、今になって思います。どうやらわたしは自分から狙っていくとうまくいかない。目の前に来たものに向き合っていくうちに、気がついたら〝あれ? NHKのキャスターに流れ着いている〟みたいな、ふわふわとした感じが合っているみたいです」

 

NHKのキャスター時代をふり返って、「楽しむというのともちがう」とおっしゃった重信さん。たが、話をされているその姿は、からだじゅうから「わくわく」があふれているようだった。本当に好きなことをされていたんだなと、話を聞いているこちらまで浮き立つほどだ。

 

後編は、ヤミつきになるほど好きだったキャスターから
スピーチコンサルタントへの転身に迫ります!

 

 

イベント情報
7月に重信さんのイベントを開催します。ぜひリアルでお会いしましょう!