上山に来て、最初に抱いたイメージがあるというーー「牛耕」だ。
イメージの元となったのは、韓国映画の『牛の鈴音』だった。ドキュメンタリー映画なので、もちろん実話である。すでにDVDは発売終了しているが、幸いにもYouTubeに予告編を見つけた。興味のある方はぜひ観てから読み進めてほしい。

 

 

予告編だけで涙腺が決壊しそうである。カッチさんは、DVDを入手して100回くらい観たそうだ。

 

「これを観たときに〝こうやって俺は死のう〟と思ったんです。観ていなかったら心に完成形を描けなかった気がします。今の若い奴らは観たほうがいい。韓国語ですから言葉はわかりません。米を作っている人間同士だから、別に言葉なんかどうでもいいんです。やっていることはいっしょですから。日本人同士でもそうですけど、自分のやり方だけなんですよ」

 

その一方で、上山では現在、企業と草刈りロボットの共同開発を進めている。最新技術の導入で農作業を変えていくと思いきや、古くからある牛耕への熱意を持つ。この独特のバランス感覚が、旗振り役としての魅力なのだろう。だが棚田の再生なら、ほかの土地でも良かったのではないか? なぜ上山なのか?

 

「僕の今の最大の信用はこの上山集楽という土地。〝ここで生きているんだよ〟ということ。村人にも溶け込んで住まわせていただいている。裏切らないですもん、ここの人ら。ずっとここに江戸時代からおる人たちですから。この人らが〝ああ、ようやってる〟と言ってくれることほど嬉しいことはないんです。どこの地域に行っても〝ああ、上山の地主さんやな〟みたいな感じで受け入れられる。田んぼ作って作業することに、まず垣根がないです」

 

とはいえ、必ずしも「よくやっている」と好意的な目ばかりではない。棚田再生には負のイメージがつきまとう現状もある。〝こんなことをやっても無駄〟〝こんなのやっても食えないよ、どうやって稼ぐんだ?〟という按配だ。

 

「それでも、爺ちゃんたちは椎茸をやったら金になるじゃないか、松林を整備したらマツタケが採れるんじゃないかと、いまだに貪欲なんです。もう腰が曲がって下を向いているような爺ちゃんですよ。ここにいる人はここで生きてきているんです。だからお金に貪欲なんです。
だけど、そうじゃない周りの人たちはすごくナーバスです。農民を見て〝能無し〟って言うんですよ。能無しなんて、僕は生まれて初めて人の口から聞いたわ。あれは衝撃的でしたね。そこまで追い込まれているのかな、それが今の社会なのかなと」

 

これもまた、少子高齢化の暗い一面なのかもしれない。しかし、実際に若い人たちの移住者が増えているのだという。若手にはどんな風に接しているのだろう?

 

「ここに来てくれたらもうファミリーですから、何かあったときは、僕は全力で守りますよ。この村の中では責任がありますから。僕らは、絶対にケツまくらないです。もう何があろうが。〝ちゃんと終わらせなさい〟と言われたら終わらせますし、だからそれをみんな見ていて、〝ああ、この人は大丈夫や〟と思うから移住してくる人がいるわけですよ。
〝来るもの拒まず、去るもの追わず〟です。それはもう人の価値観の違いですから。強制する必要はないし、自分が強制されたら嫌ですもん。それが不安になる人は出て行きます。だからやっぱり自分に自信のある人しか残らない。自信があったら乗り越えるとかそんなこと考える必要すらないです」

 

なるほど、取材中にお会いした若い人たちは「しっかり」した方ばかりだったが、来るべきしてきたという印象だ。一人ひとりが自立していて、やれることを実践している。

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